2025.05.08
チェロ・黒川真洋さん(2024年10月~12月)
チェロ・黒川真洋さん(使用楽器Cat.no.33 ロレンツォ・マルキ 1983年製)の活動リポートです。
活動報告:
10月にドイツは秋から冬にゆっくりと流れ始めました。
ドイツの冬は非常に冷たく暗いですが、クリスマスはドイツ人にとって一大イベントなのでクリスマスや新年が近づくと家族で劇場にオペラを鑑賞に来る光景をよく目にしました。
10月にはアカデミー生での室内楽コンサートがBode Museumにてありました。私はモーツァルトのクラリネット五重奏を初めて勉強することになり、元々好きでよく聴いていた作品でとても楽しみながら取り組むことができました。オーケストラのソロ奏者たちにレッスンもお願いすることができ、彼らがオーケストラピットで演奏している時にどういう風に、どれほど譜面を読み込んでいるか垣間見ることもでき、とても刺激になりました。
同時に劇場ではR.StraussのDie Frau Ohne Schatten(影のない女)のプロジェクトもありました。指揮者はConstantin Trinksで、本当に素晴らしかったです。久しぶりに誠実な指揮者と良いリハーサルの時間を過ごせたと思います。しかも自分の大好きなオーケストラの中で弾かせてもらえたことは最高でした。この作品はシュトラウスの中では後期のオペラになると思いますが彼の後期に目立つ大編成によるかなり室内楽要素が強く、薔薇の騎士やドンファンなどの作品に比べるとかなりオーケストラの中でのバランスの取り方などが肝になるなあと弾いてみて勉強になりました。また再度弾かせてもらいたい作品の一つです。
11月になると突然に寒さが訪れてドイツの長い冬の始まりを感じます。
いつも憂鬱になりますが、これにも大分慣れてきました。
個人的にこのシーズンで1番楽しみにしていたのは、11月のシンフォニーコンサートでした。演目はワーグナーのトリスタンとイゾルデからVorspielとLiebestod、同じくワーグナーのWalküreから1幕で、指揮者はここの前主席指揮のDaniel Barenboimで予定されていました。30年間ここベルリン国立歌劇場を務めた歴史を持っています。非常に壮大なプログラムで、しかも私が幼少期の頃から聴いていたピアニスト、バレンボイムを目の前にすることにとてつもない緊張でした。
バレンボイムが目の前に現れて指揮を始めると、いつも一緒に弾いているのにオーケストラの音が聴いたことのない音色でした。物凄い迫力でした。バレンボイムはあいにく全てのリハーサルを指揮した後、コンサートの前にキャンセルをし別の指揮者が2回のコンサートを指揮することになりました。私はそれでも彼と一緒に演奏できたことはとても誇らしく思います。
11月はそんな経験もあり、自分の成長のため積極的にレッスンを受講するなど活動的でした。
12月には街も雰囲気も全てがクリスマス一色になり、劇場の近くのクリスマスマーケットも賑やかになります。劇場ではこの時期はいつもよりフル稼働でプロジェクトが進みますが、今回はBizetのCarmenとBalletのSchwannenseeを弾かせてもらうことになりました。Carmenは既に小澤征爾音楽塾で弾いたことがあり身体がちゃんと覚えていてとても楽しかったです。白鳥の湖はこの劇場では常に弾かれている作品でいつも3ヶ月前には全ての公演のチケットが売り切れです。同僚は完全に暗譜していると言っていたのでもちろんそこにレベルを合わせるのは気合が必要でしたがとても勉強になった作品でした。
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黒川真洋